超音波で調音をみることを考える

構音障害

超音波で調音をみることを考える

超音波で調音時の舌運動をみれるのか

昨日はMRIを用いた舌運動の研究を紹介しながら/i/調音時の舌運動を考えました(くわしくはこちら)。

では、他の母音調音時にはどのような動きをするのでしょうか。

得意のエレクトロパラトグラフィ(EPG)の研究でもそこは検討されています。

日本語母音のEPG累積頻度パターン

藤原 百合, 山本 一郎, 前川 圭子,エレクトロパラトグラフィ (EPG) 臨床活用に向けた日本語音韻目標パターンの作成と構音点の定量的評価指標の算定,49巻2号,2008

舌口蓋接触はこれでわかりますね。本当にお世話になる論文です。

母音によって舌口蓋接触に差はあり、/i//e/では舌縁が多く接触しますが、/a/や/o/では接触は少ないです。この結果からも多くの舌運動を理解することができますが、接触していない場所の舌運動に関してはほとんどわかりません。

そこで有効なのが超音波診断装置です。超音波であれば舌の動きを捉えることができます。

母音/a/発声時は、舌正中部に深いGrooveを形成し、舌後方は舌側縁部が上方へ運動していた

母音/i/発声時は、舌正中部に浅いGrooveを形成し、舌中央で舌側縁部が若干上方へ運動していた

母音/u/発声時は、舌正中部の前方に深いGrooveを形成し、中央~後方で上方へ運動していた

母音/e/発声時は、舌正中部の前方では浅いGrooveを形成し、中央~後方で上方へ運動していた

母音/o/発声時は、舌正中部は前方~中央で深いGrooveを形成し、後方では舌側縁部が上方へ運動していた

森 紀美江, 向井 信彦, 近藤 貴大, 武井 良子, 山下 夕香里, 長谷川 和子, 高橋 浩二.超音波画像を基にした3次元舌形状標準モデルの構築.超音波医学.42巻1号.2015

この研究は対象が1名なので個性の可能性が否定できないのですが貴重な情報です。また、3D/4Dのプローブなので臨床的に用いることの難しさはありますが、医工連携で行った研究として価値は高いように感じます。

前舌母音では前方のGrooveは浅い傾向にありますね。そして、後方の舌側縁部の挙上に関しては、上方へ運動していることが多いようです。これは、構音の際の側面狭窄を考えるとそのように運動することも納得いきます。また、/i/では上方運動が少ないことは狭母音だからという理由だけではなさそうなので興味深いですね。

この研究でエレクトロパラトグラフィではわからない舌の運動、例えば/a/の際にも舌が運動していることなどがわかるのは興味深いです。単音のレベルでの調音運動ではなくて、会話などの連続でかつ高速の運動の際には運動様式は変わっていると思うので、そういった点を究明できるとリハビリのアイディアも変わってくると思います。

ちなみに、超音波の欠点は空気があるところはうまく映らないので、口蓋接触がない箇所は描画しにくいところです。細かいこと言えば、口蓋に一度接触した動画を映してそこから全く動かな避ければ後追いで口蓋の位置を特定することはできるらしいです。

個人的にはエレクトロパラトグラフィと超音波を同時に計測して、口蓋接触と舌の運動を評価できるような研究を行いたいなと思います。

これからも色々な視点から考えていきたいと思います。
皆さんも気づいたことがあればコメントやコンタクトで意見ください。

引用:藤原 百合, 山本 一郎, 前川 圭子,エレクトロパラトグラフィ (EPG) 臨床活用に向けた日本語音韻目標パターンの作成と構音点の定量的評価指標の算定,49巻2号,2008
森 紀美江, 向井 信彦, 近藤 貴大, 武井 良子, 山下 夕香里, 長谷川 和子, 高橋 浩二.超音波画像を基にした3次元舌形状標準モデルの構築.超音波医学.42巻1号.2015

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