記憶のリハビリテーションについて考える
PQRST法について
自分は数年前まで知らなかったのだが記憶のリハビリにPQRST法というものがあります。
記憶のリハビリは難しいというイメージがあり、メモやデバイスを利用した代償手段の指導を行うことが多いです。課題としても記銘し再生・再認する課題を漫然と行っていた恥ずかしい過去もあります。
今の流行が何なのかは知りませんが、PQRST法を考えたいと思います。
学校で習った記憶がないので論文で調べてみました。
PQRST法は(略)Preview(全体的文脈を学習するためにざっと目を通す) Question(テキストのキーとなる概念について尋ねる) Read(質問に答えることを念頭に置いて読む) Self-Recitation(読み終えた情報を能動的に覚えこむ) Test(質問に答えることによって自ら再検討する)からなる。
高原 世津子, 野間 俊一, 種村 留美, 上床 輝久, 種村 純.記憶障害例に対して残存する視覚記憶を利用したPQRST法の効果.高次脳機能研究 (旧 失語症研究).25号3号.2005
臨床では、
ざっと目を通してもらう⇒質問する⇒質問の答えのところにマーカー引く⇒もう一回読む⇒もう一回質問に答えてもらう
みたいなことをやっています。
今回、良好な視覚性記憶を利用するために、文章課題と視覚課題の両方を用いたが、文章課題は[文章のみ]、視覚課題は[文章+視覚]であり、後者はより記憶に有利な材料を含んでいると考える。
高原 世津子, 野間 俊一, 種村 留美, 上床 輝久, 種村 純.記憶障害例に対して残存する視覚記憶を利用したPQRST法の効果.高次脳機能研究 (旧 失語症研究).25号3号.2005
この論文で症例への介入について検討しています。
文章のみでPQRST法を用いた場合と写真のついたもので実施した場合で差があったようです。
ちなみに、この介入では、受傷後7か月半経過した症例で行っています。
そこで改善を認めているので非常に興味深いと思います。
記憶障害のリハビリテーションは
三村 將, 小松 伸一.記憶障害のリハビリテーションのあり方.高次脳機能研究 (旧 失語症研究).23巻3号.2003
(1)患者主体であること
(2)実現可能で明確であること
(3)達成までの期間が特定されること
(4)効果測定が可能であること
を念頭に置いて目標設定がなされるべきである。
健忘症患者では、間違えれば間違えるほど、その誤りを訂正できず(誤りに引きずられて)、正答に到達できなくなる。したがって、試行錯誤を繰り返しながら学習していく健常者とは異なり、効率的に新しい知識を獲得していくためには、可能な限り誤りを犯さないことが重要である。
三村 將, 小松 伸一.記憶障害のリハビリテーションのあり方.高次脳機能研究 (旧 失語症研究).23巻3号.2003
三村先生のこの論文では記憶障害のリハビリテーションについて書いてくれています。
誤りなし学習の必要性があることがわかります。
訓練課題の設定は『難しいけど頑張ったらできる』ぐらいのレベルで行うことが多いと思います。
頑張っても無理な課題をずっと続けても結局できませんし、簡単すぎても「なんでやらなあかんの?」ってなってしまいますので、頑張ったらできるところが重要だなと考えています。
ただ、ただ頑張ってもらうのではなく、こちらが課題の順番や目的とする課題の前に基礎的な練習を行うなどの配慮が必要だと思います。
記憶のリハビリテーションって本当に難しいと思います。しかし、かなり重要ですし、困って外来で検査を受けている人も多いと思います。これからもよりより方法を検討していく必要があると思います。
これからも色々な視点から考えていきたいと思います。
皆さんも気づいたことがあればコメントやコンタクトで意見ください。
引用:高原 世津子, 野間 俊一, 種村 留美, 上床 輝久, 種村 純.記憶障害例に対して残存する視覚記憶を利用したPQRST法の効果.高次脳機能研究 (旧 失語症研究).25号3号.2005
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