【論文紹介】水分の嚥下について

嚥下障害

水分の嚥下について

おくらら
おくらら

おひさしぶりです、おくららです。
バタバタしてて、久々の更新ですが今回は水分嚥下についてです。臨床場面で困難さを示すことの多い水分について考えてみました。

はじめに

固形物は大丈夫でも水分では困難さがあることが多く、とろみで対応することは少なくありません。

特に固形物との混合していると喉頭内流入や誤嚥の危険性はあるので注意が必要です。

咽頭通過の速度が速いこともありますが、その他にも要素があります。

今回は少しだけ論文を見つけたので紹介していこうと思います。

結論から言うと『水分嚥下の際には運動動態が異なる』です。

なので『食物と嚥下の関係について知りたい人』におすすめです。

嚥下のモデル

まずは、一般的なモデルのことを話していきたいと思います。

一般的に言われているのは期モデルプロセスモデルです。

知っている人は水分の嚥下動態まで飛ばしてもらって大丈夫です。

4期モデル

準備期-口腔期-咽頭期-食道期からなります

準備期
嚥下できる状態に口腔内に保持する過程

口腔期
保持した食塊を咽頭へ送り込む過程

咽頭期
食物を食道に送り込む過程
各部位の活動に関しては下記の論文が参考になります。

稲本陽子, 加賀谷 斉, 才藤栄一 他.320 列面検出器型CT(320-ADCT)による嚥下動態評価の信頼性の検討.Japanese Journal of Comprehensive Rehabilitation Science.Vol3.2012

食道期
食道の蠕動運動により胃へと送り込まれる過程

おそらく、最も一般的なモデルであり各部門での共通言語として扱われることも多いと思います

ただし、4期モデルは水分の一口嚥下のモデルなので注意が必要です。

 

プロセスモデル

次にプロセスモデルについて説明します。

固形物の咀嚼嚥下を行う際に、咀嚼中にも咽頭部に送り込まれるために4期モデルでは説明できないので、プロセスモデルが考えられています。

プロセスモデルは、咀嚼嚥下のプロセスを 4 つのステージに分けて説明している。食物の捕食後に、その食物を臼歯部まで運び(stage I transport)、その後、食物を咀嚼し、唾液と混和させ(processing)、咀嚼した食物を順次咽頭へと送る(stage II transport)。咽頭へと送り込まれた食物は、嚥下までそこで蓄積し、最終的に口腔内で咀嚼された食物と一緒になって嚥下される(swallowing)。プロセスモデルでは、古典的な 4 期連続モデルと異なり、Processingと口腔からの送り込み(StageII transport)のステージがオーバーラップしているのが特徴である。

松尾 浩一郎. 誤嚥性肺炎の予防 2 ——口腔ケアと摂食嚥下リハビリテーション—— プロセスモデルで考える 咀嚼嚥下リハビリテーション. 日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学. 35巻3号. 2015

VFG images and drawing of stage II transport

Koichiro Matsuo, Jeffrey B. Palmer. Anatomy and Physiology of Feeding and Swallowing Normal and Abnormal. Physical Medicine and Rehabilitation Clinics of North America. Volume 19. Issue 4. 2008

4期モデルの命令嚥下との違いは stage II transportでしょう。

咀嚼しながら咽頭部に送り込まれる様子がモデルで表されています。

これだけでも、食物の物性により嚥下動態が異なることはわかると思います。

 

水分の嚥下動態

水分嚥下に関しての嚥下動態です。

論文があるので紹介します(英語なのであっているかわかりませんが…)。

Normal swallowing of a liquid bolus: Drawings based on a videofluorographic recording. (A) The bolus is held between the anterior surface of the tongue and hard palate, in a “swallow ready” position (end of oral preparatory stage). The tongue presses against the palate both in front of and behind the bolus to prevent spillage. (B) The bolus is propelled from the oral cavity to the pharynx through the fauces (Oral propulsive stage). The anterior tongue pushes the bolus against the hard palate just behind the upper incisors while posterior tongue drops away from the palate. (C-D) Pharyngeal stage. (C) The soft palate elevates, closing off the nasopharynx. The area of tongue-palate contact spreads posteriorly, squeezing the bolus into the pharynx. The larynx is displaced upward and forward as the epiglottis tilts backward. (D) The upper esophageal sphincter opens. The tongue base retracts to contact the pharyngeal wall, which contracts around the bolus, starting superiorly and then progressing downward toward the esophagus. (E) The soft palate descends and the larynx and pharynx reopen. The upper esophageal sphincter returns to its usual closed state after the bolus passes.

Koichiro Matsuo, Jeffrey B. Palmer. Anatomy and Physiology of Feeding and Swallowing Normal and Abnormal. Physical Medicine and Rehabilitation Clinics of North America. Volume 19. Issue 4. 2008

BとCを見るとわかりますが、口蓋に押し付けながら咽頭に送り込むのではなく流れ込むようにして移動しているのが分かると思います。

また、プロセスモデルでの図とは少し違うのはわかると思います。

別の論文では、連続嚥下の際には、喉頭蓋が反転毎回するタイプと反転し続けるタイプがあり、前者では30%ほどで反転し続けるタイプでは60%ほどが嚥下運動が生じる際には咽頭の深い位置まで流れていることが言われています。

何にしても水分は咽頭の深い位置まで送り込まれてから嚥下運動が起こりやすいので注意が必要である理由がわかってもらえるのではないかと思います。

まとめ

簡単にですが、物性によって嚥下運動が異なることがわかる論文を紹介させてもらいました。

摂食嚥下領域は咽頭部という見えない部分を評価し訓練していく必要があるのでこういった基本的な運動について知っておくことは大変参考になると思います。

ただし、基本的に臨床では患者さんの症状に合わせて検討する必要がありますので、『食材=対応』にはなりません。

今回は咽頭部の運動についてが多かったですが、口腔内の運動も食材によって変化しますので、よくよく観察して介入していくと良いと思います。

皆さんも食材に合わせた介入を検討する際に参考にしてみてください。

これからも色々な視点から考えていきたいですね。
皆さんも気づいたことがあればコメントやコンタクトで意見ください。

引用:稲本陽子, 加賀谷 斉, 才藤栄一 他.320 列面検出器型CT(320-ADCT)による嚥下動態評価の信頼性の検討.Japanese Journal of Comprehensive Rehabilitation Science.Vol3.2012
松尾 浩一郎. 誤嚥性肺炎の予防 2 ——口腔ケアと摂食嚥下リハビリテーション—— プロセスモデルで考える 咀嚼嚥下リハビリテーション. 日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学. 35巻3号. 2015
Koichiro Matsuo, Jeffrey B. Palmer. Anatomy and Physiology of Feeding and Swallowing Normal and Abnormal. Physical Medicine and Rehabilitation Clinics of North America. Volume 19. Issue 4. 2008

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