【論文紹介】舌骨の動きについてー舌骨筋群の活動ー

嚥下障害

【論文紹介】舌骨の動きについてー舌骨筋群の活動ー

おくらら
おくらら

どーもー、おくららです。
今回は舌骨の動きに関してわかりやすい論文があったので紹介します。
日本の研究なので親近感もありますね笑。

はじめに

嚥下臨床に関わる方であれば舌骨の動きに関しては関心領域だと思います。

中には「いやいや、喉頭のほうが大切でしょ」という方もいるかもしれませんが、「舌骨の動きになんて興味ありません」って方は嚥下臨床でいないと思います。

そもそも比べるものでもありませんしね。

今回は舌骨の動きに関して320列CTを用いて解析した論文があったので紹介します。

結論をいうと『上方移動と前方移動では活動する筋に違いがある』です。

 

最後に私の私見も書かせてもらいました。

未熟なので間違ったことを書いているかもしれませんのでぜひコメントください。

嚥下に関する過去の記事も参考にしてみてください。

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舌骨筋群

今回は、『Dynamic change in hyoid muscle length associated with trajectory of hyoid bone during swallowing: analysis using 320-row area detector computed tomography』という論文を紹介します。

320列のCTを用いて撮影する方法で藤田医科大学の稲本がよく研究していらっしゃいますね。

余談ですが、結構被爆量は1回に1.08mSv(VFは5分間で1.05mSv)みたいです。

私の肌感覚ですが、結構多いですよね。

なので連続で何口も撮影するようなものではないのだと思います。

 

さて、舌骨筋群の位置がわからないと舌骨の動きを知るには難しいのでまずはそこからです。

論文の中でも紹介されていたのでそのまま引用させてもらいます。

Takeshi Okada 1, Yoichiro Aoyagi, Yoko Inamoto et al. Dynamic change in hyoid muscle length associated with trajectory of hyoid bone during swallowing: analysis using 320-row area detector computed tomography. J Appl Physiol 115.  2013

Stylohyoid 茎突舌骨筋
Posterior digastric 顎二腹筋の後腹
Mylohyoid 顎舌骨筋
Geniohyoid オトガイ舌骨筋
Thyrohyoid 甲状舌骨筋
anterior digastric 顎二腹筋の前腹
※解剖学の本を見ながらなので多分間違っていないと思います。

今回が舌骨の上方移動と前方移動に関してなので舌骨上筋群の話が主となっています。

こういった詳細な位置関係を撮影できるのは320列CTの強みなのでしょう。

 

舌骨の動き

では、舌骨の動きです。

論文の中では上方移動と前方移動に分けて書かれていたので引用させてもらいます。

The onset of upward movement of the hyoid bone was very similar to the onset of shortening of the stylohyoid, posterior digastric, and mylohyoid muscles in terms of timing.

The onset of forward movement of the hyoid was very similar to the onset of shortening of the geniohyoid, thyrohyoid, and anterior digastric muscles.

Takeshi Okada 1, Yoichiro Aoyagi, Yoko Inamoto et al. Dynamic change in hyoid muscle length associated with trajectory of hyoid bone during swallowing: analysis using 320-row area detector computed tomography. J Appl Physiol 115.  2013

上方移動には、茎突舌骨筋顎二腹筋の後腹顎舌骨筋の収縮のタイミングとよく合っていたとのことです。

前方移動には、オトガイ舌骨筋甲状舌骨筋顎二腹筋の前腹の収縮のタイミングと合っていましたよとのことです。

上方も前方も主に舌骨上筋群で行われているので納得のいく結果ですね。

ただ興味深いのはタイミングです。

綺麗に挙上と前方移動でわかれているのが図からわかると思います。

このように舌骨上筋群とひとまとめにされていますが、活動するタイミングをずらすことにより上方移動と前方移動でわかれています。

ここらへんが、VFで舌骨の動きを観察して評価する際に重要になってきますね。

ちなみに、甲状舌骨筋の収縮に関しては、喉頭を挙上させているからだと考えるのが無難だと思います。

 

まとめ

さて、個人的に気になったのは図の上方移動の際の部分です。

茎突舌骨筋と顎二腹筋の後腹に関しては、舌骨よりも後方(尾側)に位置しているので単純に考えれば後方に移動ことになると思います。

ただ、顎舌骨筋が前方に位置していることで運動のベクトルは上方になるのだと思います。

また、後方へ移動することが他の論文でも言われています。

第一に比較的にゆっくりと挙上運動を始めるが、この際わずかに後方運動を伴うことが多い(挙上後退運動)。次いで第二に舌骨は大きく挙上、同時に急激に前進する(挙上前進運動)。そして最大挙上位置および最大前進位置に停滞したのちに第三の運動、すなわち元の位置へ復元するために後退・下降運動を行う(下降後退運動)。

中原 学. 嚥下時における舌骨運動のX線学的研究. 日本耳鼻咽喉科学会会報. 90巻5号. 1987

ここでは、挙上後退運動ー挙上前進運動-下降後退運動があるといわれており、まずは茎突舌骨筋と顎二腹筋の後腹が活動するのだと思えば合点がいきます。

(この論文1987年ってこんな前からここまでわかってたなんて凄い…)

また、今回紹介している論文の茎突舌骨筋と顎二腹筋の後腹の線と顎舌骨筋の線を比べてみると、前者はほぼ同時に最も低い位置までいっていますが、後者は少しずれているようにみえます。

さらに、前者の最も低い位置になっている個所と前方移動の個所が概ね合致しているので、前方移動の邪魔にならないような活動になっている、後者は前方移動の援助にもなっていると思うと面白いですよね。

 

今回は舌骨の運動について論文を紹介させてもらいました。

舌骨の運動はVFでの解析には非常に大切ですし、舌骨筋群のトレーニングは嚥下臨床で頻回に行われていると思います。

非常に読みやすい論文でしたので是非皆さんも読んでみてください。

これからも色々な視点から考えていきたいですね。
皆さんも気づいたことがあればコメントやコンタクトで意見ください。

引用
Takeshi Okada 1, Yoichiro Aoyagi, Yoko Inamoto et al. Dynamic change in hyoid muscle length associated with trajectory of hyoid bone during swallowing: analysis using 320-row area detector computed tomography. J Appl Physiol 115.  2013
中原 学. 嚥下時における舌骨運動のX線学的研究. 日本耳鼻咽喉科学会会報. 90巻5号. 1987

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