【論文紹介】発話速度について

構音障害
おくらら
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どーもー、おくららです
今回は発話速度についての論文を紹介します

発話速度についてー健常者とdysarthria患者の比較ー

はじめに

皆さんは普段どれぐらの速さで話していますか。

私は早口であると周囲から言われており、速く話さないと話せなくなるので早口になってしまいます。

リハビリでも発話速度は重要な要素の一つです。

今回は発話速度に関する論文を紹介します。

結論から言うと『dysarthria 患者の自覚している速度も気にする必要がある』です。

なので『発話速度の目標をイメージしたい人』におすすめです。

 

発話速度における明瞭度と自然度の関係

運動障害性構音障害のリハビリでは、発話速度を調整し発話することが多くあります。

発話速度の調整は明瞭度自然度のバランスが大切です。

極端に言えば、できるだけゆっくり話せば何を言っているかわかりますが、不自然になります。

しかし、発話速度が速いことで問題が生じる場合には、普通の速度で話すと不明瞭となり何を言っているかわからなくなります。

このように発話速度を調整する方法は単純にゆっくり話せばよいというものではなく、バランスを考えながら行う必要があります。

ただ、訓練を続けていくうえで自然度は改善してくることがあるといわれているので、最初は不自然でも、明瞭度を考慮していくことが大切な場合も多いです。

ここまでは一般的な意見です。要するに参考書に書いてある内容ですね。

 

ここからは個人的な意見ですが、そもそも発話速度にあわせて舌の運動動態も変化すると思うので、その部分を解明することで効率的に訓練が行えるのではないかと考えています。

私の研究ではそういった変化をEPGを用いて究明しリハビリに活かすことを目的としています。

下記にEPGについて説明した記事を載せておきますので興味のある方は是非。

【論文紹介】エレクトロパラトグラフィ(EPG)について考える
私がよく参考にすることの多いエレクトロパラトグラフィについて説明しました。非常に興味深い検査機器なのでこれをみて少しでもイメージをつけてもらえればうれしいです。

 

健常者とdysarthria病患者の発話速度

今回は、健常若年者と健常高齢者、dysarthria患者で様々な実験を比較している論文を紹介します。

実験A:音読での速度調節(速度見本なし)
実験B:音読での速度調節(速度見本あり)
実験C:自己発話と見本発話の発話速度の比較判断
実験D:見本発話の発話速度の判断
実験EFG:タッピングによる速度の表出と判断

志村 栄二, 筧 一彦. Dysarthria例の発話速度調節訓練に影響を与える要因の一考察(第1報). 音声言語医学. 53巻4号. 2012

まずは実験Aの結果です。

私の研究では発話速度の設定を『遅い』『普通』『速い』に設定していますが、その速度設定に参考にしている結果です。

健常若年群における「遅い」の平均発話速度は3.6mora/s、「普通」は6.0mora/s、「速い」は7.9mora/s、健常高齢群における「遅い」の平均発話速度は4.4mora/s、「普通」は6.1mora/s、「速い」は7.5mora/sであった。dysarthria群では、それぞれ2.4mora/s、2.8mora/s、3.3mora/s

志村 栄二, 筧 一彦. Dysarthria例の発話速度調節訓練に影響を与える要因の一考察(第1報). 音声言語医学. 53巻4号. 2012

健常若年群と健常高齢群でも差がありますが、dysarthria群(PDや)とも大きな差があることがわかります。

有意差までは書いていなかったのであくまでも印象になりますが、その差でいえば「遅い」に比べて「普通」や「速い」で差が大きいようです。

 

次に実験Cの結果です。

志村 栄二, 筧 一彦. Dysarthria例の発話速度調節訓練に影響を与える要因の一考察(第1報). 音声言語医学. 53巻4号. 2012

実験Cは自己発話と速さが5段階に異なる見本発話をそれぞれペアにして、どちらが早いかあるいは同じかについて発話速度の比較・判断能力を調べたようです。

dysarthria群の方が、自身で普通と考える速度が普通よりも遅くなっているようです。

著者は他の実験の結果も加味すると発話調整訓練に先立って速度の知覚や記憶機能を含めた評価やアプローチが必要と考察しています。

 

おわりに

今回は発話速度に関する論文を紹介しました。

発話速度の調整を臨床で行うことは多いと思いますが、そもそもdysarthria患者では『普通』と感じる速度が健常群とは異なっている可能性があるようです。

ただし、今回の対象者は疾患も発症からの期間もバラバラなので、その点も変化の要因の可能性はあります。

肌感覚としても、発症からの期間が長く、発話速度の変化(遅くなっていること)が生活に定着してしまっていることで自身の『普通』という基準がが変化することがあると思います。

また、障害部位としても小脳などの比較機構の障害がある方が速度知覚は低下すると思いますのでそういった点を臨床では留意する必要がありそうです。

ちなみに、AとC以外の実験も興味深い結果でしたので興味のあるかたは是非。

これからも色々な視点から考えていきたいですね。
皆さんも気づいたことがあればコメントやコンタクトで意見ください。

引用:志村 栄二, 筧 一彦. Dysarthria例の発話速度調節訓練に影響を与える要因の一考察(第1報). 音声言語医学. 53巻4号. 2012

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