【論文紹介】姿勢と発声について考える

構音障害

姿勢と発声について考える

おくらら
おくらら

どーもー、おくららです。
今回は姿勢と発声についてです。
姿勢は発声に重要な要素なので参考になると思います。

はじめに

脳卒中の臨床において声量の低下は頻回に遭遇する問題であり、多くの言語聴覚士が工夫しながら発声練習を行っていると思います。

その中でも姿勢については度々議論されると思います。

背臥位が良いのか?端坐位が良いのか?立位が良いのか?

その悩みを解決するヒントになる論文を見つけたので紹介します。

結論から言うと『アライメントを意識して筋活動を予測することが大切』です。

今回は『発声の姿勢について悩むことが多い人』におすすめです。

発声の基礎

発声についてですが、『肺からの呼気流が喉頭に達し、喉頭を通過する際に声帯を振動させ音源を作ること』といったものかと思います(正確に知りたい人は参考書を読んでください)。

そこから共鳴-調音といった過程を経て語音として発話することが出来ます。

ちなみに、過去にも声帯振動や共鳴について簡単に書いています。

声帯振動のメカニズムに関してそちらを参考にしてください。

このように呼吸と発声には密接な関係があることがわかるかと思います。

臨床では呼吸筋と内喉頭筋の関係性を考えながら発声の評価や訓練を行う必要があります。

たとえば、嗄声を認める際には、呼気と声門閉鎖の関係性から考えると良いです。

呼気の低下がある場合には、声門閉鎖に対して十分な圧がかからず無力性嗄声の様な症状が起こりえますし、声門閉鎖が不十分であれば気息性嗄声も起こりえます。

もしくは、過内転することで気息性嗄声にもなることがあるので、嗄声を見る際には常に呼気と声帯の状態を考える必要があります。

その為にも、課題としては呼気持続、呼気圧持続、発声持続を比較することが重要になります。

呼吸と声門閉鎖が重要であることはわかったところで、どのような姿勢が最も有利なのか考える必要がありますね。

姿勢と音圧や筋活動の差について

では、姿勢と音圧(声の大きさ)と腹筋群(腹直筋、外腹斜筋)の活動について分析した論文があるので紹介します。

音圧と姿勢について

背臥位は102.1±5.3dBSPL、端坐位は100.1±5.0dBSPL、直立位は102.9±4.3dBSPLだった。直立位での最大音圧レベルは端坐位と比較して大きくなる傾向であった。

小田原 守, 大塚 裕一, 宮本 恵美, 古閑 公治, 久保 高明, 船越 和美.姿勢が最大発声時の呼吸補助筋の筋活動に及ぼす影響.敬心・研究ジャーナル.3号1巻.2019

この研究は健常成人に対して背臥位、端坐位、立位で発声を行った際の音圧と腹筋群の活動を確認したものです。

結果としては、端坐位と立位で有意差を認めたようです。

結果だけ見ると背臥位と端坐位でも同じぐらいの差が生じているように見えます。

肌感覚でいうと、1.5dBのみなので大きな違いのようには感じないですね。

個人的な見解としては、有意差があったことよりも、背臥位と端坐位、立位で大きな差がないことが興味深いなと思いました。

言い換えれば、『健常成人はどのような姿勢でもある程度の発声は確保できている』ともみてとれます。

脳卒中の運動障害性構音障害の臨床では、姿勢によって声量が変化することはしばしば経験します。また、背臥位に比べて、端坐位、立位の方が肺活量としては得られやすいのが一般的です。

健常成人は肺活量の不利をカバーするだけの喉頭の活動があるのだと思います。

この論文の考察でも声門閉鎖と声門振動様式による代償ではないかと考察しています。

この結果だけ見ると、健常成人の研究では単純に脳卒中患者と同様であるとは言い切れないつもりで読まないといけないなぁいうことが自分の感想になります。

  

腹筋群の活動と姿勢について

左右の腹直筋の筋活動では姿勢間に有意差は見られなかった。
(略)
左右の外腹斜筋共に、背臥位は端坐位に比べて優位に高い値であった。

小田原 守, 大塚 裕一, 宮本 恵美, 古閑 公治, 久保 高明, 船越 和美.姿勢が最大発声時の呼吸補助筋の筋活動に及ぼす影響.敬心・研究ジャーナル.3号1巻.2019

同様の研究で筋活動を分析したものです。

腹直筋では有意差は認めてないようですが、外腹斜筋では有意差を認めているようです。

この点に関して考察では、端坐位の骨盤傾斜角度が影響しているのではないかと考えているようです。

確かに骨盤の傾斜角度は浅くなることから外腹斜筋の筋長は短くなるかもしれませんし、これは臨床の肌感覚とも一致します。

また、背臥位で活動が高いことは肺活量の低下や胸郭の拡張制限という不利を補うためではないかと考えているようです。

これに関しても健常成人ではそのように自然と代償を行うことが出来るが、脳卒中患者は難しくなっているので背臥位では声が小さいと思うと納得はいきますね。

この論文の考察では、背臥位、端坐位、立位に対して、背面圧迫による胸郭の拡張制限の有無骨盤傾斜角度による外腹斜筋の筋長で比較しています。

これは、臨床での視点として参考になると思います。

少し自分の臨床に置き換えると、胸郭の運動を制限する要因はないか腹筋群の筋長は確保できているかは重要な観察点です。

発声に不利な姿勢になっているようであれば、体幹の抗重力方向への伸展を誘導することや姿勢を変えながら発声を行うことはしばしばありますね。

このことからも、言語聴覚士のリハビリ内でも姿勢を変えることの意義はあるのではないかと思います。

まとめ

まとめて書くと…

健常成人はdBSPLでは著明な数値上の差は認めない
(正直もっと差があると思ってました…)

全身のアライメントを確認し筋活動を促していく

が大切だと思います。

患者さんを見ていると、車椅子で骨盤が後傾しており、体幹も屈曲して徒手的に誘導するが十分な伸展が得られないが多いです。

この中で発声練習を行っても活動が得られずに改善しにくい状況ですよね。

しっかり姿勢を調整してから介入することでより良い成果が生まれると思います。

また、脳卒中の患者さんは姿勢の持続に不利が生じていることも多いので、筋長を出すためにと思い、立位にしても姿勢保持に筋活動の大部分を使ってしまい、努力的な発声となることも少なくありません。

個人ごとに姿勢の適性を見極めて行う必要があります。

その際に、今回の論文の結果である姿勢と音圧や筋活動の関係については、参考になるのではないでしょうか。皆さんも発声練習の際には気を付けてみてください。

   

これからも色々な視点から考えていきたいですね。
皆さんも気づいたことがあればコメントやコンタクトで意見ください。

引用:小田原 守, 大塚 裕一, 宮本 恵美, 古閑 公治, 久保 高明, 船越 和美.姿勢が最大発声時の呼吸補助筋の筋活動に及ぼす影響.敬心・研究ジャーナル.3号1巻.2019

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