母音について考える

構音訓練の際の工夫について続けて記事を書いてきました。
今回は母音のことについて考えていきたいと思います。
はじめに
皆さん構音練習を行う際に、どのような工夫をしていますか?
子音の調音点の違いや後続母音をどうするか等は重要であると思います。
今回は後続母音をどのように選択するか考えていきたいと思います。
結論から言うと『ア行ばかりでは上手くいかない』です。
ということは『母音の特徴を知らないと難しい』ということです。
本日は母音の違いを考えていきたいと思います。
母音の特徴
母音がどのような特徴なのかを知る必要があると思います。
舌の分類には
①舌の最後部の前後
②舌の最後部の上下
③円唇/非円唇
がありますね。この3つの特徴で母音は分類されます。日本語の『あ』、『い』、『う』、『え』、『お』も分類されています。
厳密にはその時々で表記が異なりますが、簡略表記では[a]、[i]、[ɯ]、[e]、[o]と発話されることが多いかと思います。
特に「あ」は/a/と/ɑ/の間の音かと思うので賛否両論ですよね。
細かいことは斎藤先生の『日本語音声学入門』を参考にしてください。
構音に関連する舌口蓋接触に関して論文を引用しましょう。
日本語母音のEPG累積頻度パターンは,/a/ /o/ではほとんど接触が見られず,/u/ /e/ /i/ と舌が前方に挙上するにつれて接触が多くなった。
藤原 百合, 山本 一郎, 前川 圭子,エレクトロパラトグラフィ (EPG) 臨床活用に向けた日本語音韻目標パターンの作成と構音点の定量的評価指標の算定,49巻2号,2008
このように母音でも狭母音、半狭母音の場合には舌縁の挙上が生じます。
調音は前後の音によって影響を受けるので母音の際の舌の運動は把握しておく必要あります。
構音訓練でどのように母音を考えるか
では、どのようにして構音に活かしていくかどうか考えてみます。
母音の特徴の①と②でF1とF2が変わってくると思いますが、臨床でも気にしないといけませんね。
このことは舌の発話の際の位置関係するので発話の際にはどの音に近く歪んでいるのかは気にする必要がありますね。
ただ、どんな音に歪んでいることもそうですが、歪むだけの舌運動の背景を考えるのが重要です。
恥ずかしながら③までは臨床で意識できていないのでここは保留にしておきます。
舌口蓋接触に関しては重要な要素だと思います。
学会発表のレベルですが、発話速度が速くなることで舌後方側部が持続的に接触しているという発表があります。
自由会話でみられたようですが、[a]や[o]の発話時にも認められたそうです。
発話速度が速くなることで舌の調音動態は変化する可能性があります。
これらからも単音のみの練習では自由会話は改善しない可能性がありますよね。
最後に論文には書いていませんが、臨床の肌感覚としては母音によって緊張度が異なる印象があります。
これを意識して、低緊張パターン、高緊張パターンで母音の選択を考慮しています。
努力性や粗糙性が強くて力を込めて発話している緊張が高い場合には/a/や/o/ を選択することが多いです。
また、無力性が強く緊張が低い場合には/i/や/e/ を用いることが多いです。
このような工夫は発声練習で行うことも多いですが、発声練習から構音練習へ移行するような場合に考慮することもあります。
このように母音も構音練習を行う際には考慮する必要がある大切な要素ですね。
他にもいい方法があればコメントいただけると励みになります。
これからも色々な視点から考えていきたいですね。
皆さんも気づいたことがあればコメントやコンタクトで意見ください。
引用:藤原 百合, 山本 一郎, 前川 圭子,エレクトロパラトグラフィ (EPG) 臨床活用に向けた日本語音韻目標パターンの作成と構音点の定量的評価指標の算定,49巻2号,2008
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