【訓練方法】保続のリハビリテーションについて

失語症

保続のリハビリテーションについて

おくらら
おくらら

今回は保続のリハビリテーションについてです。
以前は分類などについて考えを書いたので今日はTAPについてです。
どのように自覚をしてもらうかを考えるきっかけになりました。
保続には頻回に遭遇するのでTAPは参考になると思います。

TAPについて

以前に保続の分類や機序について書きました。詳しくはこちらをご覧ください。

その時にはリハビリテーションについてはあまり記載できなかったので、今回はTAPの紹介をしながら保続と失語症のリハビリテーションについて考えていきたいと思います。

では、例のごとく論文から引用していきます。

結論から書くと、TAPにより呼称の成績が上がり、保続が減少したようです。

ただし、シングルケーススタディなのでその点も心に留めて読む必要があります。

TAPとは、保続の減少を目的としたエラーコントロールメソッドで、症例に保続症状の自覚をさせたのち、保続の出現を極力抑え、保続せずに呼称に成功し続けるように実施させる。
(略)原法では、保続症状について説明し、保続を抑制することを求めている。

浜田 智哉, 田中 果南, 今井 友城, 東山 雄一, 田中 章景.失語症者の保続症状に対する TAP (Treatment of Aphasic Perseveration) の効果.高次脳機能研究 (旧 失語症研究).37巻2号.2017

この論文では、保続の症状を紙に書いて×をつけたり破ったりして保続の自覚と抑制を促したそうです。なかなか日本ではここまでやらない印象なので、LSVTの時も思いましたが。欧米の訓練方法と日本の文化は異なる印象ですよね。

TAPの手続きの図ですがとても分かりやすく参考になりますね。
ヒントの出し方を具体的に書いてくれていますが、保続に関わらず臨床でもよく行うヒントですよね。

先日も紹介しましたが、認知神経心理学的モデルでボックスとルートに困難さがあるのかを考えて、前刺激の設定やヒントを出す必要があると思います。その時にヒントの出し方の具体例は参考になりますね。

カードの順番なども極力保続が生じない単語の順番に変えるなどの工夫を行っているようです。

TAPの記録スコアフォーム上では呼称得点の上昇と保続得点の減少がみられた。
(略)
TAPで使用したキューの中で使用頻度が高く、保続抑制効果のあったものは語頭音キューや音読キューであった。
(略)
保続の種類では直後型の保続が大部分を占め、遅延型の保続は出現頻度が少なく出現率はほぼ一定であった。直後型保続の出現頻度の減少に統計学的有意差を認めた。
(略)
直後型保続と遅延型保続の発言には共通して意味・音韻処理にプライミング効果の抑制障害が関与し、直後型には前反応の抑制障害が加わると考えることができる。そして、TAPの手続きは患者に前反応を意識的に抑制することを求めるため直後型保続が減りやすいことが示された。

浜田 智哉, 田中 果南, 今井 友城, 東山 雄一, 田中 章景.失語症者の保続症状に対する TAP (Treatment of Aphasic Perseveration) の効果.高次脳機能研究 (旧 失語症研究).37巻2号.2017

TAAPでは直後型はどうやら減らすことが出来るようです。もちろん、それに伴い呼称の成績も向上しているので呼称課題を組み立てるうえで重要ですね。

TAPはやっていることは保続を自覚させて呼称を行うシンプルな手続きなので保続を自覚させることが大切なようです。

臨床の肌感覚としては、保続が生じたときの気づきの有無は改善に影響しているように感じます。やはり気づきがなく、遅延型保続が生じる場合には抑制が難しいことが多い印象です。その点で、自覚の有無は関係している印象です。特に呼称のような随意的な発話では、認知的な制御の有無は関係していると思います。

どんなリハビリにしろ自身の行為を気づいてもらえるようにすすめていくことは大切だと思います。
何に注意を向けるべきか、何を目標にして誘導すべきかは介入で大切な要素だと思います。

今回は保続のリハビリテーションについて考えましたが、どんなリハビリテーションでも気づきを促しながら行う必要がありますね。

ただ、気づきをどのように認知してもらうかは重要であり、言語化をすることでむしろ緊張を高めることもあるように臨床では感じます。

TAPのように紙に書きだして行うことが全てに適応するとは限らないので個別性に合わせて気づきを促す必要があります。

これからも色々な視点から考えていきたいですね。
皆さんも気づいたことがあればコメントやコンタクトで意見ください。

引用:浜田 智哉, 田中 果南, 今井 友城, 東山 雄一, 田中 章景.失語症者の保続症状に対する TAP (Treatment of Aphasic Perseveration) の効果.高次脳機能研究 (旧 失語症研究).37巻2号.2017

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