超音波で嚥下をどこまで評価できるか①

嚥下障害

超音波で嚥下をどこまで評価できるか①

超音波で嚥下筋の評価をする

自分の研究はエレクトロパラトグラフィを用いた舌口蓋接触ですが、見えない部分を可視化することに興味があり研究しています。

その点で外してはいけないのは超音波診断装置だと思います。

先日舌骨筋群の話を少し書きましたが、舌骨筋群は言語聴覚士との重要な評価対象であることは言うまでもありません。超音波診断装置を用いればより正確に評価できると思います。

しかし、日常的にSTが超音波診断装置を用いて評価している病院は聞いたことがありません。研究のレベルで用いられているのが現状のように感じます。

そこで超音波診断装置を用いた評価について調べてみました。

信頼性はどうなの?

・オトガイ舌骨筋の短縮率は検査内と検査間で信頼性が高いと報告されている。

・舌骨と甲状軟骨上縁との距離の変化による計測が、再現性が報告されている信頼性の高い方法である。

花山 耕三, 山本 五弥子,摂食嚥下障害の超音波による評価,The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine,54巻9号,2016

・期間をあけて評価を行った場合でも、信頼性が高い。

清水五弥子,花山耕三,目谷浩通,超音波を用いたオトガイ舌骨筋測定法の再テスト信頼性,Japanese Journal of Comprehensive Rehabilitation Science,Vol7,2016

二つ目の論文は、オトガイ舌骨筋の長さ(安静時)、オトガイ舌骨筋の面積(安静時)、オトガイ舌骨筋の長さ(嚥下時)、オトガイ舌骨筋の短縮率を分析した実験ですが、信頼性は高いという結果となったようです。

これはなかなか心高鳴る結果だと思います。だって、ある程度評価のフレームを院内で検討して医師と協同すれば客観的な数値で嚥下関連筋の評価が出来ることになります。

所属している研究会で筋電フィードバック法のセミナーがありましたが、舌圧、筋電フィードバック、超音波診断はベッドサイドでもできるのでどんどん普及したら良いなと思います。

超音波診断装置の医療機器分類は?

そもそも、言語聴覚士が超音波診断装置を用いてもよいのか気になりますよね。
結論から言うと知識がないのではっきりとしたことは言えません。
ただ、情報を集めたので臨床検査技師の先生や超音波診断装置のメーカーさんに聞くことはできそうです。

管理医療機器Class Ⅱ

人の生命の危険又は重大な機能障害に直結する可能性は低いもの。分析装置においては、

① 誤った診断結果が得られた場合に、人の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある検査項目以外の検査項目を測定する自己検査用診断機器(当該診断機器による診断結果が医学的に重要な状態を確定しないもの、又は診断結果が暫定的で、適切な追加の検査によるフォローアップを必要とするものを含む。)

② 主たる反応系を内蔵する専用分析機器のうち、標準品の無いもの(クラスⅢ品目を除く。)

(例)画像診断機器、造影剤注入装置、電子体温計、電子式血圧計、電子内視鏡、歯科用合金 等

https://www.j-mdc.com/product/classification.php

管理医療機器にはclassⅠとⅡ、高度管理医療機器classⅢとⅣがあるようです。
例を見てみると、classⅡでは画像診断機器と電子血圧計が同様の扱いなんですね。
医療機器としては使用に制限はないかも知れません(責任はとれないけど…)。

言語聴覚士法としては使用してもよいの?


超音波診断装置は侵襲性は低い(もしくは無い)といわれているので医療機器分類で血圧計と同じ扱いなら使用してもよいのでは?と単純に感じてしまいます。

後は法律上使用してもよいかどうかですよね。

言語聴覚士法(平成9年法律第132号)
第二条 この法律で「言語聴覚士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、言語聴覚士の名称を用いて、音声機能、言語機能又は聴覚に障害のある者についてその機能の維持向上を図るため、言語訓練その他の訓練、これに必要な検査及び助言、指導その他の援助を行うことを業とする者という。

第四十二条 言語聴覚士は、保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)第三十一条第一項及び第三十二条の規定にかかわらず、診療の補助として、医師又は歯科医師の指示の下に、嚥下訓練、人工内耳の調整その他厚生労働省令で定める行為を行うことを業とすることができる。

言語聴覚士法施行規則(平成10年厚生省令第74号)
第二十二条 法律第四十二条第一項の厚生労働省令で定める行為は、次のとおりとする。
一 機器を用いる聴力検査(気導により行われる定性的な検査で次に掲げる周波数及び聴力レベルによるものを除く。)
イ 周波数千ヘルツ及び聴力レベル三十デシベルのもの
ロ 周波数四千ヘルツ及び聴力レベル二十五デシベルのもの
ハ 周波数四千ヘルツ及び聴力レベル三十デシベルのもの
ニ 周波数四千ヘルツ及び聴力レベル四十デシベルのもの
二 聴性脳幹反応検査
三 音声機能に係る検査及び訓練(他動運動若しくは抵抗運動を伴うもの又は薬剤若しくは器具を使用するものに限る。)
四 言語機能に係る検査及び訓練(他動運動若しくは抵抗運動を伴うもの又は薬剤若しくは器具を使用するものに限る。)
五 耳型の採型
六 補聴器装用訓練

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000028zea-att/2r985200000290ui.pdf 2020.8.16HP

これをみると評価に関しては書かれていませんでした。
言語や聴覚に関してはある程度書かれていますが。
ちょっとわからないので学校で嚥下教えている知人に確認しておきます…。

なんにしても超音波診断装置が言語聴覚士の臨床に一般的になればもっと根拠に基づいた訓練が行えると思います。

明日は少し舌運動を超音波でどれだけ見れるかを考えてみたいと思います。
皆さんも気づいたことがあればコメントやコンタクトで意見ください。

引用
花山 耕三, 山本 五弥子,摂食嚥下障害の超音波による評価,The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine,54巻9号,2016
清水五弥子,花山耕三,目谷浩通,超音波を用いたオトガイ舌骨筋測定法の再テスト信頼性,Japanese Journal of Comprehensive Rehabilitation Science,Vol7,2016
Japan MDC.https://www.j-mdc.com/product/classification.php.2020.8.16確認
第20回チーム医療推進のための看護業務検討ワーキンググループ 資料1-2.https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000028zea-att/2r985200000290ui.pdf.2020.8.16確認

コメント

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