失語症と観念失行を考える

失語症

失語症と観念失行を考える

理解できていないのか、道具は使えないのか

言語聴覚士の臨床では、広範囲な病巣の場合には失語症と観念失行、観念運動失行の責任病巣を考えると理解と切り分けて考えるのが難しいこともありますね。

失行の評価を行う際にはADL場面と訓練場面の両方を評価する必要がありますが、どの程度どの動作にまで影響しているのかはなかなか評価が難しいです。

理解できているのか道具を使えないのかの関係性を知っておきたいところだと思います。

学生さんや若手の言語聴覚士と話していると、SLTAの口頭命令で減点があった場合に「失行の影響かも知れません」といわれることがあります。その関係性が分かっていれば考察の助けになると思います。

調べてみたらそのまんまのタイトルの論文がありました(笑)

・失語症患者に観念失行があっても道具の認知、理解は可能だった。検査場面で道具の使用を誤っても日常生活ではうまく使えることもあった。このことから、観念失行があっても道具使用のプログラムは保たれており、正しいプログラムのセットが正確にできるかどうかが問題であると考えられた。

引用:緒方 敦子, 川平 和美, 失語症と観念失行, 高次脳機能研究 (旧 失語症研究), 32巻2号, 2014

どうやら失語症で観念失行がある場合にも道具の使用に関してのプログラムは保たれているようです。

対象者がブローカ失語とウェルニッケ失語の患者が多かったので、失語症患者全般のことではない可能性はあると思います。しかし、かなり参考になるデータではないでしょうか。

僕は今まで評価をする際に、物品の数の調整、視覚認知の確認、道具操作の確認、動作理解の確認、日常生活場面での状況をある程度評価したうえで考察していました。これらを誤る方も多いのですが、その場合には上記に当てはまらないので、引き続きより深めて評価する必要がありそうです。

行為のプログラムのセットが容易になるように環境調整を整えた日常生活場面で、正しい物品の使用を誤りの無い学習を繰り返すことが必要と思われる。

引用:緒方 敦子, 川平 和美, 失語症と観念失行, 高次脳機能研究 (旧 失語症研究), 32巻2号, 2014

やはり環境調整を行い正しい動作を行う必要があるようです。リハビリを行う上で、課題の難易度調整を行うことは必須です。簡単すぎても難しすぎても効果が得られないことが多いですもんね。

僕も失行に関しても正しい運動感覚を与えて正しい運動を誘導することを意識して行っていました。もちろん、言語聴覚士のみでは難しいので作業療法士と協同しながら行っています。言語聴覚士がしっかりと評価して作業療法士と共有することが大切ですね。

これからも色々な視点から考えていきたいですね。
皆さんも気づいたことがあればコメントやコンタクトで意見ください。

引用:緒方 敦子, 川平 和美, 失語症と観念失行, 高次脳機能研究 (旧 失語症研究), 32巻2号, 2014

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